真逆の理で困ってる最中
なんか上にいた
カンクゥサの山道を歩き続けて既に一日以上の時間が経過していた。山地に巣食う亜獣達との戦闘も慣れて、異質な概念を秘めた山を登っているという感覚も薄れ始める。張り詰めていた緊張も緩み、どこかのんびりと言っても良い調子で荒れた道を歩いていたぷるみえーる達であったが。
「――ッ!」
唐突に響く無音の悲鳴。息を呑み、止める気配はすづ傍から生まれたものだ。ぷるみえーるは弾かれたようにそちらを見る。
気配の主はノエルだ。僅かに身を折り、片の掌を己のこめかみに当てて、顔色は蒼白。表情は何かを堪えるように顰められている。
「ぅ、あ、はぁ――ぁ、は」
息が詰まっているのか。彼女は喉を懸命に動かし、荒れた呼気と声を出す。いきなりの異質にどうしたのかと彼女の傍へと駆け寄る。と、ノエルは歪んだ顔をあげてぷるみえーるの眼を見ると、
「何か、何か来ます。――気をつけて、ぷるみえーる」
(……何か?)
苦しげなノエルが必死に絞り出す言葉は曖昧極まりないモノ。だが、何かとは一体何なのかと、そう問おうとするぷるみえーるを遮るように。
きしり、と空間が小さく揺れた。
同時に、唐突に湧き出した独特の気配が周囲の空間をゆっくりと侵食していく。
(これは、何だ?)
そう自問して、答えは一拍も置かずに導き出される。これは、上位の鬼種が放つ陰の気配だ。
そして、まるでぷるみえーるが下した結論沿うかのようなタイミングで、いつの間にか周囲に浮かび上がる火玉の群れ。それはガレーを訪れる際に通り掛かった森で見たものと同じ“鬼火”だった。
となれば、次に何が現れるかは容易に想像が付く。
ぷるみえーるが舌打ちしつつ、気配の出所と思わしき場所。山道の脇に広がる林の奥へと視線を飛ばせば、そこには全身を黒色の鎧で覆い、手には異様な程の大きさを持つ太刀を携えた巨鬼の姿が見えた。
「く――ぷるみえーる……」
と、直ぐ傍で生まれた細い声にぷるみえーるは我に返る。どうやらノエルは完全に鬼の気配に当てられているらしく、まともに戦えるような様子ではない。
ならば、己の力のみでどうにかしなければ。
林の奥に見えた鎧鬼は、幾つもの鬼火を従えつつ、徐々に速度を上げてこちらへと迫ってくる。
ぷるみえーるは首を数度振り、気配に圧倒されていた心を奮い立たせると、己が武器を抜いてノエルを自分の背後へと押しやり、そして鋭く前へと出た。
同時。鎧の周囲に集っていた鬼火がふるりと揺れ、そして鎧の鬼は体を開くと刀を肩に担いで一歩、大きく踏み込んでくる!!
[BossMonster Encountered!]
魂集めし鎧鬼
☆(ゝω・)v
枯々の空気!
炎ダメージ上昇!
枯々の空気!
炎ダメージ上昇!
HP:504/504毒
HP:597/597
HP:649/649
HP:437/437
HP:2100/2100反
HP:700/700
HP:700/700
毒121ダメージ
デルタスラッシュ!
1st!
⇒禍鬼ドゥエルエ
317ダメージΣ
2nd!
⇒禍鬼ドゥエルエ
353ダメージΣ
3rd!
⇒禍鬼ドゥエルエ
315ダメージΣ
絡みつく鬼火!
⇒ぷるみえーる
トラップセット
⇒本部長
トラップセット
⇒Isamu
トラップセット
⇒Yuver
トラップセット
絡みつく鬼火!
⇒ぷるみえーる
トラップセット
⇒本部長
トラップセット
⇒Isamu
トラップセット
⇒Yuver
トラップセット
怨気招来!
呪われの宴!
⇒ぷるみえーる
攻撃力-44
混乱
⇒本部長
攻撃力-44
⇒Isamu
混乱
⇒Yuver
攻撃力-44
呪われの宴!
⇒ぷるみえーる
防御力-44
混乱
⇒本部長
防御力-44
⇒Isamu
防御力-44
⇒Yuver
防御力-44
キャンセレイション!
⇒ぷるみえーる
効果なし
⇒本部長
効果なし
⇒Isamu
効果なし
⇒Yuver
効果なし
⇒禍鬼ドゥエルエ
反射解除
⇒ワィスプ・オルト・シラA
効果なし
⇒ワィスプ・オルト・シラB
効果なし
集中!
コールドフォース!
氷の力場+70
我に返った
HP:362/504乱
HP:597/597
HP:649/649
HP:437/437
HP:1115/2100再
HP:700/700
HP:700/700
毒91ダメージ
クリアトラップ!
⇒ぷるみえーる
1トラップ解除
⇒本部長
1トラップ解除
⇒Isamu
1トラップ解除
⇒Yuver
1トラップ解除
⇒禍鬼ドゥエルエ
1トラップ解除
⇒ワィスプ・オルト・シラA
何も起きない
⇒ワィスプ・オルト・シラB
1トラップ解除
幽かなる火種!
⇒ぷるみえーる
効かない
⇒本部長
58ダメージΣ
崩滅の連鎖!
81ダメージΣ
鈍化
⇒Isamu
18ダメージΣ
崩滅の連鎖!
81ダメージΣ
⇒Yuver
12ダメージΣ
崩滅の連鎖!
121ダメージΣ
幽かなる火種!
⇒ぷるみえーる
効かない
⇒本部長
2連携!
96ダメージΣ
⇒Isamu
24ダメージΣ
⇒Yuver
21ダメージΣ
グレイヴスカージ!
剣の雨!
⇒禍鬼ドゥエルエ
783ダメージΣ
ダウン
⇒ワィスプ・オルト・シラA
回避!
⇒ワィスプ・オルト・シラB
回避!
210HP回復
ペトリカース!
ストーンコフィン!
⇒禍鬼ドゥエルエ
魔力-44
ストーンコフィン!
⇒ワィスプ・オルト・シラA
魔力-44
ストーンコフィン!
⇒ワィスプ・オルト・シラA
魔力-44
ストーンコフィン!
⇒ワィスプ・オルト・シラB
魔力-44
テンペストアロー!
弓の一撃!
⇒ワィスプ・オルト・シラA
回避!
風の追撃!
⇒禍鬼ドゥエルエ
145ダメージΣ
リフト
⇒ワィスプ・オルト・シラA
145ダメージΣ
⇒ワィスプ・オルト・シラB
145ダメージΣ
ダイアモンドダスト!
⇒禍鬼ドゥエルエ
2連携!
180ダメージΣ
ダウン
⇒ワィスプ・オルト・シラA
241ダメージΣ
⇒ワィスプ・オルト・シラB
241ダメージΣ
HP:271/504乱
HP:362/597
HP:526/649
HP:283/437
HP:217/2100再
HP:314/700
HP:314/700
毒68ダメージ
ネックスリット!
⇒禍鬼ドゥエルエ
859ダメージΣ
倒れた
絡みつく鬼火!
⇒ぷるみえーる
トラップセット
⇒本部長
トラップセット
⇒Isamu
トラップセット
⇒Yuver
トラップセット
絡みつく鬼火!
⇒ぷるみえーる
トラップセット
⇒本部長
トラップセット
⇒Isamu
トラップセット
⇒Yuver
トラップセット
ライフストリーム!
⇒ワィスプ・オルト・シラB
50ダメージΣ
セイクリッドソング!
⇒ワィスプ・オルト・シラA
384ダメージΣ
倒れた
⇒ワィスプ・オルト・シラB
384ダメージΣ
倒れた
・
鬼の片腕が唸り、大刀が凄まじい音を立てて大気を薙ぐ。振るわれる刀は速度、重量共に並ではなく、太刀が纏う黒色の霧は鈍器の如き質感を持ち、触れた者の生気を吸う。直撃を貰えば無事では済まないだろう。
だが、太刀筋さえ見切っていれば避ける事は可能。
大刀自体が持つ鈍色の刃と、刀身から吹き出す黒色の影を寸での処で回避したぷるみえーるは、刀を振り抜いた為に体を開いた鎧鬼の懐へと一足で飛び込んだ。
狙うは鎧の隙間たる関節部。武器を構えて放つ技法は四度。振り抜かれた刀が戻る前に――仕留める。
「はぁああ!!」
気合の声と共に、ぷるみえーるの内より力が爆ぜる。
返って来る手応えは明瞭。武器より生まれた破壊の理は狙った箇所へ正確に刻まれ、大鬼の四肢を一気に吹き飛ばした。
(殺った!!)
――が、しかし。
勝利を確信しつつも、殆ど無意識的な行動で素早く背後へと飛び退いていたぷるみえーるの眼前を、振り戻された刀の切先が轟音を上げて通り過ぎていく。
(な……!?)
そして、一瞬の間を置いて、鈍い衝撃がぷるみえーるの側頭部を横殴りに叩いた。
「が――ッ」
視界が派手にぶれ、平衡感覚を一瞬にして失う。世界が数度の回転を経た後停止し、そこで初めて自分が地に伏している事に気付く。全身に纏わりつく尋常ではない倦怠感から、鬼が振るった刃自体は避けたものの、大刀が吹く黒霧に横面を叩かれたらしいと判断。致命的なダメージに繋がるものではない筈。そう己を叱咤し、ぷるみえーるは力の入らない身体に活を入れ懸命に身を起こす。
しかし、一体何故。
鬼の四肢は確かに吹き飛ばした筈なのに、何故刀が振り戻された?
その疑問を解消すべく、ぷるみえーるは鬼の方へと視線をやり、そこに映ったものに素直に絶句した。
片手に大刀を提げ、山道に無言のまま立つ鎧姿の巨大な鬼。こちらが放った技法で断った筈の両手両足はまるで何事も無かったかのようにそこにあり、鬼の胴と大刀を支えていたのだ。
(……馬鹿な)
唖然の表情と共に、ぷるみえーるは心の内で呟く。
先刻の手応えは幻であったのか。それとも何らかの手段で断たれた手足を即座に修復したのか。
一瞬の思考で考えられるのはこの二つだが、迫る鬼が身に付けた鎧の関節部には、先刻打ち込まれた攻撃の名残と思しき傷跡がある。ならば、恐らくは後者か。結論としては最悪のものである。
焦り、戦う姿勢を取ろうとして、膝が笑う。鬼の太刀が纏う黒霧による一撃の影響がまだ身体に残っていた。今、鬼が踏み込んできたら命はない。
――お、そこへ。
「ぷるみえーる、下がってください!!」
未だどこか苦しげな調子の声と共に、後方から灼熱の閃が放たれる。光は、じ、と耳障りな音を立てて鎧に着弾。白色の小爆発と共に鎧鬼の身体が僅かに揺らいだ。
(ノエル、か)
しかし、駄目だ。鬼の身体を覆う鎧は極めて強固で、打ち込んだところで殆ど効果は無い。狙うならばその装甲の隙間、関節となる部分でなければ。
だが、そう忠告しようとぷるみえーるが口を開く前に、更なる熱線が鎧へ向けて飛んだ。一撃、二撃、三四五と無茶苦茶な勢いで閃光が走り、鎧鬼の各所に火の花を咲かせる。
その様を見て、彼女の行動を理解する。精密な狙撃ではなく、あくまで気を引くための乱射。こちらが距離を取り、態勢を整える間を稼ぐための牽制だ。
ならば、無駄口を叩いている場合ではない。
ぷるみえーるは震える膝を叱咤すると、ゆっくりとではあるものの後退を開始。鬼には背を向けず、一歩一歩と下がる。
射撃は激しく、巨大な鎧に直撃して生まれた爆発が四散して消える前に、次の一撃が突き刺さる程。だが、それだけの連射を浴びせても、鬼を被う黒色の鎧が剥げる気配は微塵も無い。ノエルの攻撃は完全なる無駄。
――であった筈、なのだが。
今までのものと全く変わらぬ威力で放たれた、ある一撃。
それが鎧に当たると同時に、唐突に鬼の身体が揺らいだ。
「え?」
疑問の声はノエルとぷるみえーるの両者から。同時に射撃が止むが、しかし鬼はこちらに向かっての前進ではなく、鎧の表面に白く小さな電光を発しつつ、後ずさるような動きを取る。
そして次の瞬間、巨大な体躯が音も無く浮かび上がり、宙を滑る様にして山道の脇、茂る木々の合間へと消えていった。
(……どうなっている?)
何故あの鬼が退いたのか。理解できず、ぷるみえーるは茫然と鬼の消えた林の向こうを見たその時。
ぱしん、と。
軽く乾いた音と共に周囲の景色全てが僅かに、ほんの僅かにだけズレたように感じた。
「――ぷるみえーる、ご無事ですか」
声に振り向けば、まだ銃口より煙を漂わせる黒銃フォーレミュートを背負い直したノエルが、然して心配の色を見せない顔つきで傍に立っていた。そんな彼女にぷるみえーるは小さく頷いて返す。
「ですが、理解できません。何故あの鬼は退いたのでしょうか?」
ノエルもこちらの同様の疑問を抱いていたらしい。だが、彼女の質問に対する明確な解はぷるみえーるの中にも無かった。先刻のノエルの射撃はその全てが鬼を覆う鎧に当たったもので、着弾による衝撃はそれなりにあったであろう。だが、鎧を突き破り、鬼の身に傷をつけるような一撃はひとつも無かった筈。なのに、鬼はどこか怯んだような調子でこの場より退いた。
それは何故なのか。
しかしその疑問に答える声は無く。ただ静寂が包む山道の真中で、ぷるみえーるとノエルは立ち尽くすしかなかった。
See you Next phase...

